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犬のリンパ腫 猫のリンパ腫


犬のリンパ腫のプロフィール
犬のリンパ腫

リンパ腫は、悪性リンパ腫またはリンパ肉腫とも呼ばれ「○○腫」と言う名称ですが悪性の腫瘍です。リンパ球が骨髄以外の色々な体の部分で腫瘍性に増殖する疾患です。骨髄内でリンパ球が腫瘍性増殖を行っている場合には「リンパ球性白血病」と呼び、別の腫瘍に分類されます。
左表は犬のリンパ腫のプロフィールです。犬の腫瘍中では発生率が高く、日常で比較的良く遭遇する腫瘍のひとつになっています。発生年齢は6ヶ月齢~15歳齢と幅広い範囲で認められますが通常中年の頃に発生します。発生リスクの高い犬種は日本と米国では飼育犬種の違いもあり、上位がかなり異なっていますが、米国でも9位にG.リトリバーが入っている事から、この犬種については特に高リスクであると言えます。逆にリスクの低い(発生しにくい)犬種としてダックスフント、ポメラニアンが挙げられています。
発生率 犬の腫瘍全体の7~24%
造血系悪性疾患全体の83%
発生年齢 中年(年齢中央値6~9歳)
好発犬種 G.リトリバー、シェルティー、雑種、シーズー、マルチーズ(麻布大学腫瘍科;多い犬種順)
ボクサー、バセットハウンド、セントバーナード、スコティッシュ、エアデールテリア、ブルドッグ(米国データ)

冒頭で少し触れたように、リンパ腫は体のほぼ全ての組織に発生する可能性があります。また発生する場所の違いにより症状や治療に対する反応、予後(治療を行った後の経過)が異なる場合があるため、発生場所によりいくつかの型に分類されています。さらに、いかなる場所に発生し、どんな型のリンパ腫であっても現在ペットのリンパ腫がどの程度の進行度であるかを調べ把握することは治療とその予後に関して非常に重要です。そこで、リンパ腫(どの型にも共通)の進行度を表すステージ分類についても合わせて説明します。
犬のリンパ腫の病型
多中心型 末梢のリンパ節が腫大している場合で犬のリンパ腫では最も多い型です。よく飼主の方が気付かれるのは下顎リンパ節が腫れている時ですが、その他前肩甲リンパ、腋下、鼠径、膝下などのリンパ節も腫大し、疾病の進行に伴って肝臓・脾臓・骨髄等にも広がって行きます。初期には1個のリンパ節のみが腫大し、それ以外の症状が認められないこともありますが、進行に従って体重減少・食欲不振・元気消失・発熱等のあまり特徴的でない(何の病気にも認められるような)症状が現れます。末梢リンパ節が腫大する疾患はリンパ腫の他にも全身性感染症(炎症・真菌・細菌・ウイルス等)や過形成等がありますから、これらとの鑑別が必要になります。
前縦隔型(胸腺型) リンパ腫中約5%に認められ胸腔内にある前縦隔リンパ節または胸腺、あるいはこの両方の腫大を特徴とします。大きく肥大したり胸水が貯留し肺が圧迫されることにより呼吸困難が生じることがあります。また、高カルシウム血症が良く認められます。
消化管型 リンパ腫全体の5~7%に認められるタイプでメスよりオスに多いと報告されています。腸管にリンパ腫が広がっていると吸収不良・体重減少・食欲不振・低タンパク血症等が生じます。
皮膚型 皮膚に発生する型で、孤立性のこともあれば全身に多発することもあります。このタイプには口腔粘膜に発生するものもあります。非常にまれな型です。
その他(節外型) 眼、中枢神経系、骨、睾丸、鼻腔等から発生するものを含みますが、どれも非常にまれなタイプです。

犬のリンパ腫のステージ分類
ステージ Ⅰ 1箇所のリンパ節または単一器官のリンパ系組織(骨髄を除く;骨髄のみでリンパ球が増殖するのは白血病に分類される)に限られる場合はステージⅠと分類。
ステージ Ⅱ 複数のリンパ節の限局性病変のとき。扁桃腺が侵されている場合もいない場合もある。
ステージ Ⅲ 全身のリンパ節に波及している場合。
ステージ Ⅳ 肝臓、脾臓の病変、全身のリンパ節病変を伴う場合も伴わない場合もある。
ステージ Ⅴ
血液、骨髄、その他の臓器に発現。
各ステージはさらに臨床的サブステージa(臨床症状なし)またはb(臨床症状あり)に分けられる。
臨床症状;元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢などの目に見える様々な症状のこと。

治療後の経過(予後)を予測する指標
全身状態 治療開始前に元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・貧血・肺炎などの全身症状を示している患者は、示していない患者よりも予後は良くない。
臨床ステージ ステージⅠ~ⅢはステージⅣ、Ⅴよりも治療反応が良い。
高カルシウム血症の有無 高カルシウム血症を併発している場合にはそうでない場合よりも予後は良くない。
治療への反応 治療により、リンパ腫の臨床徴候(リンパ節の腫大や血液中の異常リンパ球の出現、嘔吐・下痢など)が全て消失した状態に至った患者は、そうでない患者(全ての臨床徴候が消失したわけではない状態)よりも予後が良い。
解剖学的病型 多中心型は縦隔型よりも予後は良い。
性別 メスはオスよりも予後は良い。(避妊・未避妊に関わらず)
体重 小型犬は大型犬よりも予後が良い。
ステロイド投与歴 ステロイド剤は、がん細胞の化学療法剤(抗がん剤)に対する耐性を生じやすくさせる性質があるため、化学療法剤に先立ち、単独で長期間投与してしまうと、その後の治療反応率が低下する為予後が良くない。

診断方法

1.触診:全身を触診し、リンパ節の大きさ・固さ・形・周囲組織との関連性、各種内臓の大きさや、腹腔内のしこりの
      有無を調べます。下痢などの症状がある場合には直腸も触診します。
2.血液・化学検査:血液中への異常リンパ出現の有無や、全身状態の把握のために実施します。
3.レントゲン検査:胸腔内のリンパ腫の場合にはレントゲン撮影を行いリンパ節の腫れを探します。また、腹腔内の
            臓器の状態(大きさ・位置)やリンパ節の大きさも調べることができます。
4.超音波エコー:胸腔内リンパ節の状態や腹腔内臓器・リンパ節の状態を検査することができます。レントゲンでは
           分からない、臓器や腫瘤の内部構造・血管構造等が分かります。エコーで対象物を観察しながら安
           全に針生検やバイオプシーを行うことができます。
5.内視鏡検査:消化器型のリンパ腫の場合には、腸粘膜の観察とバイオプシーを行う目的で内視鏡検査を行うことも
           あります。
6.細胞診・病理組織検査:1~5いずれの段階においても、腫大したリンパ節や異常な臓器を認めた場合には、その
                 検査対象に応じた方法でバイオプシーを行います。通常は針生検を実施し、正常とは異
                 なるリンパ球の増殖を確認することで速やかに診断が可能です。しかし、診断が付かない
                 場合には麻酔下による切除生検にて1箇所のリンパ節を全て切除して検査をしたり、トル
                 ーカット(臓器の一部分を瞬間的に切除する)や開腹手術により腸管などの臓器の一部・
                 リンパ節を切除して病理組織検査に提出し、診断を確定する必要があります。

また、例えば触診のみで異常なリンパ節が発見され、その箇所の細胞診によりリンパ腫が確定した場合には、リンパ腫がその時点でどの程度まで進行しているか(臨床ステージ)、リンパ腫によって全身にどのような影響が出ているのか、そしてこれからの治療に耐えうる全身状態であるのかどうかを正確に知る必要があるため、2~4までの検査(血液化学検査、レントゲン検査、超音波エコー、場合により他検査項目)を行うことは必要です。

治療方法

リンパ腫の治療に用いられる治療法で主なものを挙げ、その特徴について説明します。(個々の治療方法についての一般的な特性は各治療法の効果参照)
現段階では、リンパ腫の治療は根治(完治)目的ではなく、緩和目的であり、リンパ腫によってもたらされる悪影響、全身症状を改善して、リンパ腫とつきあいながらできるだけ気持ちよく生活してゆくことが目標となっています。

 化学療法

リンパ腫は全身性疾患であるため、治療法の中心は全身に効く治療方法である化学療法となります。いわゆる抗がん剤です。使用される抗がん剤は多種多様であり、そのときのペットの全身状態やリンパ腫の臨床ステージによっても変化します。基本的に数種類の薬品を組み合わせて使用することが多いのですが、その理由として、癌細胞は抗がん剤に対してすぐに耐性を獲得するため、次々に異なる作用の薬品で攻撃して耐性を獲得する暇を与えず、早期に癌細胞を減らすようにするわけです。そのため、きちんと計画された間隔で薬剤を投与することが、耐性誘発を避ける目的で重要になってきます。また、リンパ腫は化学療法に非常に良く反応するため、治療前には状態の悪かったペットが、抗がん剤の投与後には見違えるように元気になり、あたかも完治したかのように思うことがよくあります(寛解:全ての確認しうる臨床徴候が消失した状態。いわゆる根治・完治とは異なる)。しかし、癌細胞というものは見えなくなったり触れなくなった状態であってもまだまだ非常に多くの細胞が生き残っており、たった1~2回の分裂ですぐに元の数まで増殖可能です。そこで、状態が改善した後も治療を続ける必要があるのです。寛解の状態に入ってから、いつまで化学療法を継続するかは、そのペットの状態・飼主の方の都合(通院可能回数・治療コスト)や治療効果等を加味して獣医師が計画したプロトコール(治療計画)により異なります。薬剤の投与間隔や種類を変更しながらずっと継続する場合もあれば、途中で投与を中止する場合もあり、それぞれに利点・欠点があります。
適切なプロトコール(治療計画)で治療を行ない、ペットが病気とは思えないくらい元気な状態で生活していても、リンパ腫の場合には「再燃(再び癌細胞が増殖を開始し、臨床徴候が発現してくること)」ということは避けられない問題です。その場合には、それまでに使用していた薬剤とは異なる種類のものを使用して、再度の寛解を目指し、新しいプロトコールで治療を行います。この、治療→寛解→維持→再燃→再寛解、という流れは、リンパ腫に特徴的なものです。
以上のように、リンパ腫では数ヶ月~1年以上という単位で継続した化学療法を行うことが通常です。各治療法の効果でも詳しく述べていますが、治療の間にはリンパ腫による症状や抗がん剤の副作用などの様々な問題が生じる場合があります。それらを乗り越えて治療を継続して行く努力は、飼主の方、獣医師双方に求められてきます。

ひとつのデータによれば、リンパ腫と病院で診断されたイヌが、無治療に置かれた場合の中央生存期間(短いものから長いものまで含めた生存期間の中央値)は6週間と言われています。また、診断後、COPプロトコールで治療されたイヌでは中央生存期間は6ヶ月、アドレアマイシン単独で治療されたイヌでは中央生存期間9ヶ月と報告されています。最近では様々な薬剤の組み合わせにより1年を越える生存を認めるペットも少なくはありません。実際に当院でも1年以上、1年半までも良好なQOL(生活の質)で過ごすことができているペット達が存在します。

通院や治療のコスト、副作用のコントロールを克服する努力をした上でも、その程度の延命なのか?と考えられる方もたくさんいらっしゃるとは思います。治療に対する考え方、生死に対する考え方が様々であることには獣医師としても異論はありません。ただ、いくつか助言できることがあるとすれば、無治療での余命6週間の間というのは、徐々に症状が悪化していく6週間です。しかし、治療をした上での数ヶ月(もしくは1年越)では、通常の生活が営める時間です。治療により寛解に達したペットは、以前の通りに食事をし、散歩をし、元気に生活することができます。多分、傍から見たら抗がん治療を受けているとは誰も思わない、ふとすると飼主の方本人すら「もしや、完治しているのでは・・・?」と考えたくなるほどのQOLの改善を得られる期間です。そして、もし1年、ペットが良好なQOLで生活することができたとしたら?リンパ腫が好発する中年期でのイヌにとっての1年は、ヒトで言えば5年の歳月に相当します。ヒトの時間よりもイヌの時間の流れの方が早いのです。彼らにとっては非常に有意義な時間となるかも知れません。

 外科療法

リンパ腫は全身性疾患であるため、通常は外科療法の適応ではありません。しかし、皮膚に孤立して腫瘤を形成していたり、眼球や腹腔内でも孤立して病変をつくっている場合には、手術により大きなリンパ腫の塊を取り除き、癌細胞の数を減らしてやることは治療上有効です。(腫瘍細胞の数を減らしてやると、腫瘍細胞は元に戻ろうとして活発に増殖を始めるが、化学療法や放射線療法は、そのように活発に増殖する細胞に対してより効果を発揮する。各治療法の効果参照)しかし、リンパ細胞は全身に存在しているため、外科処置のみの治療で終わらず、補助療法として化学療法・放射線療法を併用し、全身に対する治療を施すことが必要になってきます。

 放射線療法

リンパ腫は放射線への感受性が非常に高い為、治療効果の高い方法です。しかし、リンパ腫は全身性疾患であるため、局所療法である放射線治療だけでなく、全身療法である化学療法と組み合わせることが必要になってきます。現在、ヒト医療では半身浴と呼ばれる方法で体の広い部分に放射線を照射し、全身療法と同じ効果を生み出して良好な治療成績をあげていることが報告されています。ペットでの利用は現在は行われていませんが、近い将来には有力な治療方法の1つになるかも知れません。

猫のリンパ腫のプロフィール
猫のリンパ腫

リンパ腫は、悪性リンパ腫またはリンパ肉腫とも呼ばれ「○○腫」と言う名称ですが悪性の腫瘍です。リンパ球が骨髄以外の色々な体の部分で腫瘍性に増殖する疾患です。骨髄内でリンパ球が腫瘍性増殖を行っている場合には「リンパ球性白血病」と呼び、別の腫瘍に分類されます。
左表は猫のリンパ腫のプロフィールです。造血系腫瘍は猫の腫瘍全体の約1/3を占めるため、リンパ系腫瘍は200/10万頭程度の発生率になるという報告があります。
また、リンパ腫に罹患した猫の30~80%がFeLV陽性であり、FeLV陽性の若齢の猫は、縦隔型リンパ腫または白血病を発症する傾向があります。FIV陽性の場合にも、リンパ腫発生のリスクが5倍に増加するというデータもあり、これらのウイルス感染は猫のリンパ腫にとって非常に重要な高リスク条件となっています。
発生率 造血系腫瘍全体の50~90%
発生年齢 平均2~6歳
高リスク
条件
FeLV(猫白血病ウイルス)やFIV(猫免疫不全ウイルス)に感染している猫

猫のリンパ腫の病型
各病型の内容詳細についてはイヌでの項を参照して下さい。ネコに特徴的な内容についてのみここに記載します。
病型 発生頻度 平均年齢 FeLV陽性率 備考
前縦隔型(胸腺型) 20~50% 2~3歳 80% イヌのように高カルシウム血症を起こすものはまれ
大半が若齢でFeLV陽性
消化器型 15~45% 8歳 30% FeLV感染率は低い
リンパ腫のせいで腸閉塞を起こすことがある
多中心型 20~40% 4歳 80% 各リンパ節病変以外に脾臓や肝臓の病変を伴うことが多い
その他
(節外型)
中枢神経系 5~10% 3~4歳 80% 後肢のマヒが良く見られる
腎臓 7歳 50% 進行すると中枢神経系へ転移
皮膚 5%以下 8~10歳 10%以下 通常皮膚のみに発症
眼・眼球後・鼻腔等


猫のリンパ腫のステージ分類
イヌでのステージ分類と同様の分類が行われています。参照されて下さい。

診断方法
イヌでの場合と同様の手順・検査で行われます。イヌと異なる点は、多中心型を疑う場合に、体表のリンパ節が腫大しているとき、イヌでは針生検等による細胞診により確定診断が可能でしたが、ネコでは腫瘍性ではないリンパ節の腫大が良く認められるため、この方法では確定できません。そのため、麻酔下(全身または局所)にてリンパ節を切除し、それを病理組織検査で調べることによって診断を下します。他詳細についてはイヌでの項を参照されて下さい。

治療後の経過(予後)を予測する指標
ステージ ステージⅠ、ⅡのネコはⅢ~Ⅴよりも良好
FeLV状態 FeLV陰性のネコ(生存期間中央値7ヶ月)は陽性のネコ(同4.2ヶ月)よりも良好
解剖学的病型 腎リンパ腫の治療反応率は縦隔・多中心・消化器型と比較して低い

治療方法
イヌでの方法とほぼ同様ですので、参照されて下さい。
化学療法において、ネコでは反応率と反応期間がイヌほど良好ではありません。しかし、消化管毒性などはイヌよりも発現頻度が少なくなっています。
ある報告では、多剤併用した化学療法によるネコのリンパ腫の治療では、完全寛解率(完全寛解;確認しうる臨床上の腫瘍徴候が消失した状態-完治とは異なる)60~70%、生存期間中央値5~7ヶ月、1年生存率30%となっています。


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